ノーナレ20200217
よくNHKの取材を受けたなと思う。
それが普通の感覚。
自分の恥をさらしてどうするんだとも。
まなぶ君の父親も取材を受けていた。
父親はまなぶくんが普通のことができないのが不思議で仕方がないようだ。
普通に起きて普通にご飯を食べて普通に仕事して、普通に生きてほしい、
と、そう願っていた。
やたら「普通」という言葉が耳に引っかかった。
社会福祉士のおねえさんはまなぶ君に「なにと比較ひているの」と優しく語りかけていた。かれは世間、とか、普通のこととか形のないものを答えていた。目標は普通に毎日フルタイムで働くことと語った。お姉さんはそんな大きすぎる目標より、まず身内に認めてもらうことを考えてみては、とアドバイスを送った。
その時まなぶくんは「それがいちばんむずかしい」といったような気がした。
父親が認めてくれない。
それが彼のひきこもりから鬱状態の原因なのだろうか。
おねえさんはそれが解決が回復への道筋だと考えているようだった。
その後まなぶ君は父と対面する。
両腕を組んで息子を迎える立派な経歴の父親。かしこそうだ。
賢ゆえ理解できない息子を斜め上から見下ろす。
その場にいたTVスタッフ全員がこの役立たずと賢者の父親との対決を見守る。
誰もまなぶくんを賢者とは見ない。
父親は子育てに後悔があるのか、遊んでやればよかったと泣き崩れるシーンがあった。
過去形だった。
今も苦しんでいるまなぶ君を前にして過去形だ。
これが編集者の狙いなら、編集者の立ち位置もここから透けて見える。
やっぱり賢者の立ち位置。
まなぶ君の苦しみにおねえさんだけが寄り添っていてよいのか。
身内がもっと寄り添ってあげれば出口が見えるのではないのか。
ラストシーンは引っ越しの準備をしているまなぶ君。
今日引っ越し予定だけど、準備ができないとつぶやくシーンで終わってる。
「やっぱり俺はだめなやつなんですよ」と言ってる、ような。
なぜここに父親がいない、兄がいない、姉がいない。
母親さえも見放されたと感じているまなぶ君は孤独だ。
励ましたり、手伝ったり、ではなく話を聞いてもらいたい。
聞いてもらえる相手がいない。
おねえさんがその役割をになっているのだろうが、まなぶ君だけにかかわってはいられない。親の役割とはそういうものかもしれない。決して楽をさせるのが親ではなく正しい方向を強制するのでもなく、じっと話を聞く。そしてできたことを見逃さない。できることは楽をさせずにやってもらう。ほめる。いくつになっても好きな人に褒められたら舞い上がる。感謝されたら木に登る。
過去形ってのはないよ。それが一番ひどい答えなんじゃないの。
まなぶ君はもう自分の足で歩いている。そのことに早く気が付いてほしいと願う。