悼む人
以前からちょこっとひかかっていた作家さんがいた。
少し前から読みたかった本があった。
「悼む人」
死者を悼む、新手の職業かと、その場での出来事や日常なのかと想像していた。
仕事に纏わる場所での物語展開は好物なんですよ。
ところが、違った。
主人公静人はただ悼むだけ。
死者を忘れない、区別なく記憶していく人だった。
そしてその行為はかかわった人を変えていく。
かかわった人?
そう、読者も。
日常の死に恐れを抱くというとは、
誰からも忘れ去られてしまう、という恐怖ではなかろうか。
誰からも忘れ去られたい、から自尽を選択する。
思考回路は止めることはできないのだろうか。
自尽を選ぶ前に一瞬で良いから、
誰を愛したのか、
誰から愛されたか、
誰から感謝されたか、を思い出してほしい。
真っ黒な世界から光が届くかもしれない。
怒りや絶望に囚われてはいけない。
ではなく、
誰を愛したか、
誰から愛されたか、
誰から感謝されたかに囚われてみよう。
それだけで、生きることが楽になるかもしれない。
人はみな、ある瞬間は「悼む人」なんだから。